2018年10月10日・11日の2日間、風間浦村下風呂地区にて「若宮稲荷神社例祭」が開催されました。
「若宮稲荷神社例祭(わかみやいなりじんじゃれいさい)」は地区内で唯一の秋祭りであり、船型の山車(だし)が地区内を運行し、大漁祈願・商売繁盛などを祈祷する伝統的なお祭りです。
「若宮稲荷神社例祭」は易国間(いこくま)地区の「大石神社例祭」、蛇浦地区の「折戸神社例祭」、桑畑地区の「桑畑八幡宮例祭」とともに「風間浦の山車行事」の一つに数えられており、2000年(平成12年)には青森県の無形民俗文化財に指定されました。その歴史は古く、稲荷神社が勧請(かんじょう)された1657年(明暦3年)まで遡るとされています。
お祭りは前日9日の宵宮から始まり、10日・11日の朝は稲荷神社で祈祷と神楽(かぐら)を行った後、神輿渡御(みこしとぎょ)行列や鮮やかに彩られた山車が下風呂温泉郷から出発します。10日は大間方面、11日は大畑方面を練り歩き、夜は稲荷神社に向けて戻ってきます。
稲荷神社での祈願後、神輿渡御がスタート
運行には天狗様や巫女、氏子衆(うじこしゅう)たちが神輿の前に行列を作って練り歩く
船型の山車「若宮丸」は2003年(平成15年)に新造された3代目。提灯や旗、四斗樽(しとだる)などで装飾された山車は鮮やかで舟盛りいっぱい、縁起の良さを連想させる
学校の理解もあり、地区内の老若男女が参加して絆を深める機会でもある
道中は要所で獅子による神楽を披露し、門打ち(かどうち)を行う
お祭り期間中、沿道の家々や旅館は玄関に燈明(とうみょう)をあげ、窓際に供物や御神酒を用意し、渡御行列を迎えます。山車が家々や旅館の前まで来ると止まり、獅子を振ることで悪魔祓いをしたり、紅白の錨(いかり)を家の中に入れ、威勢のよい沖上げ音頭を歌いながら大漁祈願・商売繁盛などを祈願します。
まるほん旅館の燈明
お供物は果物や饅頭などが一般的
漁師の家には山車から紅白の錨をおとし、大漁祈願や家庭の繁栄を祈願する
夜の山車は提灯に光が宿り、昼とは違う華やかな姿に。船頭の沖上げ音頭に応える声も一段と大きくなり、お祭りのボルテージも上々。この日のために帰省した地元出身者や観光客なども集まり、「やんまやーれやんまやーれ」「よいさーよいさー」という掛け声に下風呂温泉郷が活気に溢れます。
夜になるとシルエットが際立ち、迫力ある姿を間近で見られる
「さわげーさわげー」「下風呂わっしょい」など掛け声のバリエーションは多い
折り返し地点では力自慢の男たちが山車を反転させる見せ所も
夜の山車は後ろ姿が見送り絵になっている
山車の2階には赤い襦袢(じゅばん)を着た若者たちが乗っており、山車が電線にかからないよう刺股(さすまた)で調整したり、囃子に参加している
1階の船内では子供達も負けじと太鼓や笛の囃子で盛り立てる
2日目の夜に登場する「くるい獅子」は若宮稲荷神社例祭の名物。躍動感ある獅子の動きと激しい舞いは観衆を釘付けにします。
囃子の音に乗せられて「くるい獅子」が登場
間近で見るとなかなかの迫力
邪気を払うべく頭を噛んでもらう人も
フィナーレは地面に座布団を敷き、車座になって全員で囃子を演奏。沖上げ音頭の大合唱と子供たちの見事な太鼓さばきは圧巻です。
車座の全員囃子で下風呂温泉郷は一体となる
「一年に一度の楽しみ」と若者たちも大いに躍動する
一方、稲荷神社では神輿渡御行列を終えて最後の奉納へ。無事に完遂した報告を済ませ、村唯一の秋祭り「若宮稲荷神社例祭」が終わりを迎えます。
ライトアップされた稲荷神社も見所の一つ
無事に奉納し全ての行程が終了
「これが下風呂の祭りだ」と口々に言う下風呂神楽会の皆さん。地区の老若男女が笑顔で歌って踊り、絆を深める様子は胸を打つものがあり、古くより継承されてきた伝統文化の真髄を見ることができました。
大湯温泉の前に山車を止めて全員囃子のアンコール
「やんまやーれやんまやーれ」の声がいつまでも鳴り響く熱い夜になった